
日本の中途採用、85%の企業が選考辞退を経験!無連絡辞退は83%
転職市場が活況を呈している昨今、企業の人事担当者の皆さんは「せっかく書類選考を通過した候補者に、面接前に辞退されてしまった」「面接当日に連絡もなく来なかった」という経験をお持ちではないでしょうか?実は、この現象は今や企業の「共通の悩み」となっています。最新の調査結果から見えてきた、選考辞退の深刻な実態をお伝えします。
85%の企業が選考辞退を経験という現実
エン・ジャパンの2024年調査(293社対象)によると、直近1年以内に中途採用を実施した企業の85%が選考辞退を経験していることが判明しました。さらに深刻なのは、45%の企業が「以前よりも辞退が増えた」 と回答していることです。
特に従業員規模1,000人以上の大企業では、56%が辞退の増加を報告しており、企業規模が大きいほど選考辞退の問題が深刻化していることがわかります。
83%が経験する「無連絡辞退」の衝撃
さらに衝撃的なのは、83%の企業が面接当日の無連絡辞退(いわゆる「すっぽかし」)を経験していることです。この数値は2018年と比較して10ポイントも増加しており、無連絡辞退が急激に増加していることを示しています。
面接のために時間を確保し、場合によっては複数の面接官のスケジュールを調整した企業にとって、無連絡辞退は大きな損失となります。
転職希望者の61%が辞退経験あり
一方、転職希望者側はどうでしょうか。エン・ジャパンが8,622名を対象に実施した調査では、61%が転職活動において選考辞退をしたことがあると回答しています。この数値は2022年から5ポイント上昇しており、選考辞退がより一般的になっていることがわかります。
辞退が起こるタイミングと理由
「面接前」の辞退が最多
エン・ジャパンの調査により、選考辞退のタイミングで最も多いのは「面接前」 であることが明らかになっています。これは書類選考を通過した後、実際の面接に進む前の段階で辞退するケースです。
辞退の主な理由
転職希望者が面接前に辞退する主な理由として、以下が挙げられています:
- 「他社の選考が通過した」 - より魅力的な企業からのオファー
- 「ネットで良くない口コミを見た」 - 企業研究の結果による判断変更
- 「希望条件とのミスマッチ」 - 詳細確認後の条件不一致
- 「他社からの内定獲得」 - より早い選考プロセスの企業への流出
内定辞退率は意外に低い
興味深いことに、面接まで進んだ候補者の内定辞退率は7.9%(2022年マイナビ調査) と比較的低く、ここ数年は減少傾向にあります。これは新卒採用の内定辞退率(30%前後)と比較すると大幅に低い数値です。
つまり、最大の問題は「面接前の辞退」 であり、面接まで進んでもらえれば内定承諾の可能性は高いということがデータから読み取れます。
なぜ選考辞退が増加しているのか?
1. 売り手市場の継続
現在の転職市場は売り手市場が続いています。これにより、転職希望者は複数の選択肢を持ちやすく、より条件の良い企業を見つけると、進行中の選考を辞退するケースが増加しています。
2. 並行応募の常態化
調査によると、約80%の候補者が複数企業に同時応募しており、より魅力的なオファーを受けた時点で他社の選考から辞退することが一般的になっています。
3. 転職活動のカジュアル化
無連絡辞退の増加は、転職活動全体がよりカジュアルになっていることを示しています。候補者にとって転職活動のハードルが下がった反面、企業側には大きな負担となっています。
業界・企業規模別の傾向
企業規模による違い
- 大企業(1,000人以上):56%が「辞退の増加」を報告(最も高い割合)
- 中小企業:相対的に辞退率は低いものの、採用力の課題を抱える
業界別の特徴
- IT・テクノロジー業界:最も高い辞退率
- 製造業:比較的安定した面接到達率
- 金融・保険業:中途採用が活発で競争が激しい
実際の数字で見る採用の現実
dodaのデータによると、転職成功者は:
- 平均32社に応募
- 5回の面接を経て
- 1件の内定を獲得
これらの数字は、現在の中途採用において、多くの企業で選考辞退が発生していることの証左でもあります。
人事担当者ができる選考辞退防止策
1. 迅速な対応
候補者の関心が高いうちに、できるだけ早く次のステップに進めることが重要です。書類選考の結果通知は3日以内を目標にしましょう。選考期間が長くなるほど辞退率が高くなることが複数の調査で確認されています。
2. 面接前のフォローアップ強化
面接前の辞退が最多というデータを踏まえ、書類選考通過後から面接までの期間に丁寧なフォローアップを行いましょう:
- 面接候補日の複数提示
- 丁寧なお礼メールの送付
- 企業の魅力や面接内容の事前説明
3. 魅力的な企業情報の発信
「ネットで良くない口コミを見た」という辞退理由に対抗するため、応募時点で企業の魅力を十分に伝えましょう。職場環境、成長機会、福利厚生などを具体的に説明することが重要です。
4. コミュニケーションの強化
選考プロセス中も定期的に候補者とコンタクトを取り、関心を維持することが重要です。無連絡辞退の83%という高い数値を下げるためにも、候補者が連絡しやすい環境を整えましょう。
5. 選考プロセスの最適化
- 面接前辞退の多さを考慮し、面接まで進む候補者には特に丁寧な対応
- 選考期間の短縮(平均12.3日を目標に)
- 面接回数の見直し(長い選考プロセスは辞退率を高める)
選考辞退対策の成功事例
成功している企業では、以下のような対策を実施しています:
- 書類選考通過者への即日連絡
- 面接前の企業説明動画の提供
- カジュアル面談の実施(面接のハードルを下げる)
- 面接官と候補者のマッチング最適化
- 選考スケジュールの柔軟な調整
政府統計では見えない実態
興味深いことに、この重要な指標は厚生労働省などの政府統計では測定されていません。政府統計は完了した雇用関係に焦点を当てており、採用プロセスの段階別指標は追跡されていないのです。そのため、今回のような民間企業の調査データが、実際の採用現場の実態を知る貴重な情報源となっています。
まとめ:選考辞退は新たな採用課題
日本の中途採用市場では、85%の企業が選考辞退を経験し、83%が無連絡辞退を経験するという状況が常態化しています。特に「面接前の辞退」が最も多く、貴重な候補者を面接まで導くことが採用成功の鍵となっています。
企業は選考辞退を前提とした採用戦略の構築と、候補者との継続的なコミュニケーション強化が必要不可欠です。一方で、転職希望者も市場全体の健全性を保つため、誠実な対応を心がけることで、より良い転職市場の構築に貢献できるでしょう。
選考辞退という課題に正面から向き合い、適切な対策を講じることが、これからの中途採用成功の鍵となります。
本記事は、エン・ジャパンの選考辞退調査、エン・ジャパンの転職者アンケート、doda、マイナビ、採用歩留まりに関する調査データなどの信頼できる人材企業の2024年調査データに基づいています。